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●隠れ里●
出自:日本→岩手県→和賀
別名:─
同一:─
前神:─
字義:─

和賀の鬼柳村に扇田甚内と言う男が妻子と共に住んでいた。
ある早朝にもやのかかった南の山を眺めていると、
美しい若い女が遠くから自分に向かって手招きをしているのが見えた。
気味悪く思った甚内はわざと気がつかないふりをして家の中に入った。
その次の日の朝もまた南の山を眺めていると、昨日と同じ女が手招きをしていた。
その翌朝もまた女が手招きをしていたので、甚内は不思議に思って女に会いに行った。
女は甚内が近づくと嬉しそうに
自分は甚内の妻になる約束をした、一緒に家に来て欲しいと自分の家に誘った。
甚内は大いに戸惑ったが、女の笑顔につられて女の家について行った。
女の家は豪華な神殿の様な作りで、美しい花が咲き乱れ、大勢の女が甚内を出迎えた。
甚内はうかうかと一週間程暮らす内にこの家を気に入って女の言うとおり夫婦になった。
一ヶ月過ぎた頃、妻子の事が急に気になった甚内は一度だけ家に帰る事にした。
女は甚内に自分の事、この屋敷の事を固く口止めし、甚内を送り出した。
家に帰った甚内は、自分の法事が行われていたので驚いた。
甚内が家を出てから三年の歳月がたち、妻子はもう甚内は死んだものだと
諦めていた所だった。
甚内は誰に聞かれても適当な事を言って誤魔化していたが、
妻に激しく問い詰められ、ついに女の事を話してしまった。
すると、突然甚内は雷に打たれた様に気を失った。
妻の介抱で一命を取り留めた甚内だが、その後一生不具者となり、
家も前よりずっと貧乏になってしまった。