●鵺(ぬえ)
出自:日本、「平家物語」、「徒然草」、謡曲「鵺」
別名:─
同一:─
前神:十訓抄中の逸話から
字義:─
容姿:頭が猿、尾が蛇(蝮)、手足は虎、胴は狸という姿

平安時代末期に天皇の住む御殿を襲った怪物。
「平家物語」巻4によると、近衛(このえ)天皇(1141年即位)の時代に、毎晩午前2時頃に東三条の森の方から
黒雲がやってきて御殿を覆い、鵺がやって来た。
鵺は「とらつぐみ」という小鳥に似た声で鳴き、疫病をもたらし、天皇を脅かした。
堀江天皇の代に公卿達は相談して、かつて源義家が三度弓の弦を鳴らして物の怪を追い払った事から、
同じ源氏の武士の源頼政(みなもとのよりまさ)に退治を命じた。
頼政は井の早太という家臣に矢を背負わせ、二人で南殿の大床で鵺を待ち構えた。
黒雲が現れ、天皇が怯え始めたので黒雲の中の不気味な影に弓を射った。
するとそこから鵺が落ちてきた。
井の早太が九回さしてとどめをさし、死体をうつぼ舟に入れて川へ流した。
鵺が落ちてくるまでは、鵺は字の通り夜不気味な声で鳴く鳥の妖怪と思われていた。
また、二条天皇(1158年即位)の時代にも宵の口に鵺が現れた。
そこで再び頼政が呼び出され、鵺を退治した。
鵺が実際に姿を現したのは後にも先にもこの二度だけだが、その声だけはその後も何度か現れた。

「徒然草」によれば、真言宗の経典に書かれている事として、鵺の声が聞こえる時には紹魂の法を行えばいいとされる。
世阿弥作の謡曲「鵺」によれば、源頼政に退治された鵺は空船に乗せられて淀川に流されたが成仏出来ず、
しばしば芦屋にある洲崎の御堂に出現した。
ある時旅のがやって来て、土地の者が危険だと言うのに振り切って宿泊した。
しばらくして川から空船に乗って船人が現れた。彼が鵺の亡霊である。
亡霊は退治された経緯をに語る。
が念仏を唱えると、鵺は再び空船に乗って海の中に去って行った。
なお、この鵺の物語は「十訓抄」にあるトラツグミを五月雨の中で射ったという弓術賛美の話が元になった創作であるとされる。

その曖昧な姿から、正体不明の人物の例えとしても使われる。

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