inserted by FC2 system

●ロキ●
出自:北欧神話
別名:ロフト(天)、ローゲーもしくはロギ(炎)
同一:─
前神:─
字義:「閉ざす者」「終わらせる者」
容姿:─
家族:父にファールバウティ、母にラウヴェイ、兄弟にビーレイスト、ヘルブリンディ
   アンクルボザとの間の子にフェンリルヨルムンガンド、ヘル
   スヴァジルフェーリとの間の子にスレイプニル
   シギンとの間の子にナリ、ナルヴィ(もしくはヴァーリ)

トリックスター的存在として知られる悪神。
奸計に長けた神で優れた変身能力を持ち、幻術を操る事が出来る。
気まぐれで後先を考えないその場限りの悪戯によって神々を窮地に陥れる事も
しばしばだが、その狡猾さによって自らが招いた危機を回避する手段も心得ている。
その為他の神々には「一族の恥」だとか「虚無の権化」だとか呼ばれている。
美貌の神でもあり、北欧の女神の中で彼と床を共にしなかった者は殆どいないと
いう程プレイボーイであった。
神々の敵である巨人族の両親を持つが、オーディンと義兄弟の契りを交わす。
火の神。炉で火が踊った時は、ロキが自分の子供を叩いていると考えられた。

北欧にキリスト教が到達する前はロキは単に神界の悪戯者に過ぎなかった。
しかしキリスト教の影響によって北欧神話の変質が始まると、
ロキはキリスト教で言う所のサタンルシファー)の様な存在になる。
ロキは悪意を擬人化した者と見なされる様になった。
美しい姿をしているがこれは堕天する以前のサタンの姿に影響を受けた解釈とする説も。
ワーグナーは彼をローゲーと呼び、火の神としている。

ロキはある時生焼けの巨人の女(アンクルボザ)の心臓を見つけた。
一説によると、ロキ自ら焼き殺したとも言われる。
ロキはそれを食らい、フェンリルヨルムンガンド、ヘルを妊娠し、生んだ。
この三兄妹は災いを成すという預言がなされていた。
その為神々はこの三兄妹を葬り去ろうとした。
ヨルムンガンドは海淵へと投げ込まれたが、蛇は死ぬ所かますます大きくなり大地を
取り巻いて自分の尾を噛む程に成長しミドガルズオルム(ミッドガルド蛇)とも呼ばれた。
ヘルは死の国ニヴルヘイムに投げ落とされたが、そこで冥界と死者を統べる主になった。
フェンリルは神々に捕縛されたがラグナロクに向けて次第に大きく成長していった。

まだ世界が作られて間もない頃、神々はヴァルホル宮殿で暮らしていた。
ある日一人の大工が神々の城砦(アースガルズ)を築こうと申し出た。
しかしこの大工は太陽、そしてフレイアを見返りとして要求した。
神々は討議し誰の力も借りずに半年間で作る事が出来たなら要求に答えよる事にした。
大工はスヴァジルフェーリという大工の二倍も働く立派な牡馬と共に城壁を作った。
期限もあと三日という所で城壁は完成間近。神々はロキに何とかするように迫った。
というのも、実は神々は牡馬の協力をも認めなかったが、ロキが許していたのだった。
ロキは美しい雌馬に変身し、スヴァジルフェーリを誘惑して仕事をさせないようにした。
それを見た大工は期日までに完成させる事が出来ない事を悟り、巨人の正体を現した。
神々はそれを見て、巨人ならば約束を守る必要はないと、トール巨人の頭を割らせた。
この時、ロキが産んだ子スレイプニルオーディンに献上され、彼の愛馬となった。

ある日ロキはトールの妻であるシヴの自慢の美しい髪を丸坊主にしてしまった。
トールの怒り様はこのままではロキの全身の骨を砕きかねないすさまじい物だった。
さすがのロキも二人にドヴェルグ達に前より立派な髪を作らせると約束し、謝った。
ロキはイーヴァルディの息子達というドヴェルグの兄弟に会い、シヴの髪を作ってもらう。
この髪は黄金で出来、頭に乗せると皮膚にくっつき自然に伸びた。
兄弟は親切心でフレイの為に「スキーズブラズニル」という船を、
オーディンの為に「グングニル」という槍を作った。
ロキはこれらの宝を持ちブロックとエイトリというドヴェルグの兄弟の元を訪れる。
二人に宝を見せびらかし、こんな立派な宝より素晴らしい物はお前達には作れまい、
とけしかけ、この宝よりも素晴らしい物が作れるならば自分の頭をやると約束する。
二人が宝を作っていると、ロキは虻に変身して邪魔をするが、二人は無事に完成させた。
兄弟が作った宝の黄金を放つ猪「グリンブルスティ」はフレイに、黄金から作った腕輪
「ドラウプニル」はオーディンに、ハンマー「ミョルニル」はトールに、捧げられた。
宝を献上された三人の神が討議した結果、ミョルニルが対巨人族の武器として一番
有効であるという結論に達し、ブロックとエイトリの勝利となった。
二人はロキの頭を要求したがロキは颯爽と逃げてしまった。
そこで人情厚いトールが彼を捕まえ、ブロックは彼の口を皮ひもで縫い合わせてしまう。
しかしロキはそれを振りほどいて逃げ切ってしまった。

バルドルは母フリッグの計らいで不死身になり、皆から称えられていた。
ロキはそんな彼が相当気に食わなかった。
そこで、ロキは人間の娘に変身し、フリッグから彼の弱点を聞きだした。
バルドルの弱点はヴァルホルの西に生えているまだ若いヤドリギ。
ロキはこれを折って神々の元を訪れた。
神々は不死身の彼に武器を向け、傷一つつかない彼を称えていた。
そこでロキは盲目の神ホズをそそのかし、ヤドリギをバルドルに向けて射らせた。
ヤドリギはバルドルの胸に突き刺さり、彼は息絶えてしまった。

ある時神々はエーギルの神殿で宴会を開いていた。
神々はエーギルの召使いを褒め称えたが、ロキはそれに我慢が出来ず
召使いの一人フィマフェングを殺してしまう。
神々はロキを追い立てたがロキは逃げ去ってしまった。
ほとぼりが冷めた頃にまた神殿へとやってきたロキは、自分を捕まえる事が出来る
唯一の神トールがその場にいないのをいい事に、ロキは酒を飲み神々に対する
罵詈雑言を言いたい放題言った。
我慢ができなくなったフリッグがロキをたしなめようとするが、ロキは彼女に対し、
お前の息子を殺し、そして生き返らせない様にしたのは自分だと告白した。
そうこうしている内にトールがやってきて、ロキは彼の姿を見つけるとすぐさま逃げた。
ロキは山に逃げ込み、四方に扉のある小屋を作りどの方角にも死角がない様にした。
神々を欺くために日中は鮭に変身して滝の中を泳いでいた。
ロキは魚に化けた自分を捕まえる為に神々はどうするのだろう、と
考えている内に自分で漁に使う投網を発明してしまう。
彼は神々を目にすると慌てて火の中に投網を投げ、鮭に変身して河に逃げ込んだ。
神々がロキの小屋に踏み込んだ時、そこはもぬけの空であったが、
クヴァシルが灰になった投網を完全に復元した。
投網で捕まりそうになったロキは何とか逃げようとしたが、結局はトールに捕まってしまう。
捕まったロキが連れてこられたのは一つの洞窟で、
そこには妻のシギンと息子のナリ、ナルヴィがつれて来られていた。
そこでオーディンはナルヴィに魔法をかけ、彼を狼に変身させた。
ナルヴィはすぐに理性を失い、ナリを引き裂いてしまった。
三枚の角の尖った縄を通す穴のある石版が用意され、ロキは息子ナリのはらわたで
縛りつけられた。そこへニョルズの妃スカジが現れた。
スカジは一匹の毒蛇をロキの顔の上にすえつけ、毒蛇は毒を滴らせロキを苦しめた。
ロキの妻シギンは器をロキの上にかざして毒を受け止めた。
しかし器が一杯になると外に捨てに行き、その間ロキは毒液を浴びて身震いする。
それが世に地震と呼ばれている物となる。
1000年間地獄に拘束され、最後の審判の日までそこに繋がれているというサタン
伝承の影響だと考える学者もいる。

ラグナロクではロキはナリのはらわたの縛をとかれ、神々への復讐を果たそうとする。
まずロキはヨトゥンヘイムへ走り、巨人族の長フリムを連れてムスッペルヘイムへ向かう。
ムスッペルヘイムの長スルトは一族を率いて神々へと攻め込む。
彼は次にニヴルヘイムへ行くと冥府の番犬ガルムと死者の群れを率いてくる。
最終的にロキはヘイムダルと互いの身体に互いの頭を突き刺す形で相打ちする。