●ディオニュソス●
出自:ギリシア神話
別名:ディオニソス、リュシオス(緩める者)
同一:バッカス
前神:─
字義:─
容姿:蔦飾りを金髪の頭にいただく若い男
家族:父にゼウス、母にセメレ、(一説によると)母にデメテルもしくはレテ

葡萄と酒と陶酔と豊穣の神。また植物の神でもあり、狂気の神。
祝祭の主であり、エクスタシーを与える本尊。
ヘレニズム文化が盛んだった頃(紀元前334〜前30年頃)に最も信仰が盛んであった。
その為ホメロスの作品等ではあまり重要な神として登場しない。
トラキアがプリュギア(小アジア)から取り入れた神だと考えられる。
葡萄と蔦と薔薇が聖なる植物であり、豹と山羊と海豚が聖獣であった。
時に「リュシオス」とも呼ばれる。
これは彼の葡萄酒の贈り物が人々を日常生活のかせから解放するから。
また飲み過ぎた場合には人々の舌を緩め、他愛もない事を喋らせるからである。

セメレはプリュギアの王女で新月の巫女。
ゼウスは夜風に姿を隠して秘かに愛を求めた。
セメレヘラの嫉妬によりゼウスの神々しさに打たれ、消えてしまった。
雷電に打たれて死んでしまうという説もある。詳しくはセメレの項参照。
ゼウスは消えかけた(もしくは死んだ)セメレから妊娠後半年を経た胎児を取り出して胎児を救った。
ディオニュソスは雷撃の炎の中で生まれたのでこの火はディオニュソスの血管をめぐり、彼に比類の無い輝きをもたらしたとも言われる。
そして自分の太ももの内側に縫込み育て、臨月に取り出した。
半神であったディオニュソスはこうして一人前の神として改めて生まれる事になった。
幼いディオニュソスをヘラの嫉妬から守る為、ゼウスセメレの姉妹のイノとその夫アタマスの元に託した。
ディオニュソスが半ば成人した時、シレノスの教えを受ける様になった。
彼に葡萄の秘密とその発酵した汁がもたらす恐るべき魅力を教えたのはシレノスであった。
シレノスと一緒に地中海沿岸のあらゆる国に葡萄酒を世界に広めるべく旅に出た。
シレニパン(ディオパン)、サテュロスを従える。
彼の後ろには酔っ払って踊っている崇拝者マイナスがいつもついて回っている。
夜毎に月の下で浮かれ騒ぎ、その陶酔の力で人を殺す事も出来た。

ある時ディオニュソスは海賊に捕らえられ、賊達は彼をどこかの王子と思い、身代金をせしめようと船の上に連れ込んだ。
すると深い海の上を順風を受けて進んでいた船が突然停まった。
びっくりした船員が目を見張る前で、葡萄の蔓が海中からするすると伸び、船体をよじ登るとマストに絡み付いた。
ガレー船の奴隷の漕ぐオールは海蛇になり、船から離れると泳ぎ去った。
ディオニュソスが座っていたへさきの所には美しい金色の獅子が立っていた。
船の索具に鳴る風は笛の音となり、獅子は後ろ足で立ち踊りを踊った。
怯えた海賊達は海に飛び込み、海豚に姿を変えられたと言う。
またディオニュソスはセメレをタルタロスから救い出そうと冥府の女王ペルセポネーに花束を贈った。
その花束が余りにも美しく、その香りがいかにも芳しかったので、ペルセポネーはディオニュソスの頼みを拒む事が出来なかった。
ペルセポネーはセメレに、ディオニュソスについて生者の国に戻ることを許した。
ディオニュソスはそれからオリュンポス山に登り、ゼウスに頼んでセメレを月の女神にして貰った。
ゼウスはディオニュソスを大変気に入って、十二神に加えたいと思った。
十二の席は既に埋まっていたが、ヘスティアがディオニュソスに席を譲った。
ゼウスの右手に席を与えられ、神々の中で重んじられた。
だがディオニュソスは人間を愛し、しばしばオリュンポス山を下りていった。

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