●遠野物語(とおのものがたり)−55●

川には川童が多く棲んでおり、猿ケ石川は特に多い。
松崎村の川端の家では、二代に渡って川童の子供が生まれた。
生まれた子供はきわめて醜く、切り刻んで一升樽に入れ、土中に埋めたと言う。
ある川端の家でのことである。
家族は昼間はたけに働きにゆき、その家の娘だけが残って留守番をしていた。
帰ってみると娘はただ一人、川のなぎさにうずくまって、
気味悪くにこにこと笑っていた。
そんなことが続いた後、その娘のところに、
男が夜々通ってくるとの噂がたった。
始めのうちは、婿である娘の夫が外出している夜だけだったが、
そのうちには、婿と寝ている夜にも来るようになった。
その男が、川童ではないかとの評判が高くなったので、
一族の者が集まって、これを防ごうとしたが、
そのかいもなくやがて娘は身ごもった。
生まれた子供を見ると、その手には水かきがあった。
この娘の母もかつて川童の子を産み落とした事があると言う。

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