●遠野物語(とおのものがたり)−8●

黄昏時に女や子供で家の外に出ている者は良く神隠しに合うと言う事は
他の地方と同じである。
松崎村の寒戸と言う所の民家にて、若い娘が梨の樹の下に草履を脱ぎ置いたまま
行方知らずとなり、三十年余り過ぎた。
ある日、娘の知り合いの人々がその家に集まっている所に
老いさらばえたその娘が帰って来た。
どうやって帰って来たのかと聞くと、娘は皆に逢いたかったので帰って来たと言う。
再び、跡を残さずに娘は消えてしまった。
その日は強い風が吹いている日であった。
遠野の郷の人々は、今でも風が騒がしい日には
今日はサムトの婆が帰ってきそうな日であると言う。

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