●遠野物語(とおのものがたり)−9●

菊池弥之助(きくちやのすけ)と言う老人は若い頃に馬や馬車で物を運搬して報酬を得る仕事をしていた。
彼は笛の名人で、夜通し馬をひいて歩く時には良く笛を吹きながら歩いた。
ある月夜の晩に、何人かの仲間と共に浜へ越える境木峠へ向かっていた時に
笛を取り出して吹きすさみつつ、大谷地と言う場所を通り過ぎた。
大谷地は深い谷で、白樺の林が茂み、地面は葦などが生え湿った沢であった。
この時、谷の底から何者かの高い声で「面白いぞー」と呼ぶ声がした。
一同は青ざめて走り逃げたと言う。

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